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不平等はまずご近所から解消 ~身の回りに目をむけよう~   外国人女性の会パルヨン【Carré04掲載】

更新日:2021年3月14日


インタビュー|ニーナ・ハッカライネンさん


パルヨンとは?

 この号を発行するにあたって、私たちはSDGsの「人や国の不平等をなくそう」をテーマに選んだ。そこで思ったことが、「内なる国際化」だった。日本にいる外国人の暮らしはどうなのだろう。他の日本人と同等に暮らせているのだろうか?そこで、お話を伺ったのは、『外国人女性の会パルヨン』(以下、パルヨン)代表のニーナ・ハッカライネンさんだ。

 ニーナさんはフィンランド出身。1990年代に留学生として日本にやってきた。団体の名前のパルヨンはフィンランド語で「たくさん」という意味だ。『パルヨン』は現在、隔月に一回、外国人女性が悩みを話し合う会「プフー」を主催。他にも日本人向けに「やさしい日本語講座」や「となりの外国人とつきあうためのワークショップ」などを行政等の支援を受けて開催してきた。外国人女性の悩みを聞く「サポート電話」も定期的に行っている。活動拠点は主に京都だが、「プフー」は東京でも行っている。現在、コロナ禍を受けて、このプフーは、京都では少人数限定の集まりと、オンラインでの併用開催。東京ではオンラインのみの開催となっている。


▲コロナ禍以前の活動の様子

▲最近はオンラインでプフーを開催


設立当時と現在の状況

 『パルヨン』が設立されたのは2007年。設立しようと思ったきっかけを聞いた。当時、ニーナさんは外国籍市民政策懇話会という京都市の委員会に所属していた。そこで外国人が暮らしやすいように、色々と提言してきた。しかし、実現のスピードが遅いと感じることもあった。そんな時、知人の外国人女性が「子どもが怪我をした時に、救急車を呼ぶことができなかった。」と訴えた。それで『パルヨン』を設立しようと思ったということだ。当時、『パルヨン』にいたメンバーは、国際結婚して来日したフィリピン人女性や中国人女性が多かったとのこと。国際結婚では、言葉の壁があるところに、夫の親の介護なども加わってくる。そしてそれに関する制度もわからないという課題もある。また、自治体の広報に掲載されている情報では理解しにくいという背景もあった。他にも、母国の家族に仕送りをしたいが、それに関して夫の理解が得られないという悩みを持った人もいる。そうした様々な状況下で孤立してしまう人たちのための居場所を作りたかったという。

 ニーナさん自身は留学生として来日し、日本語もマスターしていたため、そんなに苦労はしなかったが、それでも壁にぶつかることはあった。日本の滞在が長い外国人に相談しても、「そういうものだよ」という答えがかえってくるのだけれど、どうやって乗り越えたかをもっと教えてほしかったとのこと。そんなニーナさんに孤立感を持つことがあるかどうか聞いてみたところ、現在のコロナ禍で人と会えずにオンラインが中心になっているために感じることはある、との答えがかえってきた。

 そして、今回のSDGsの目標10に絡めたテーマへと質問を移していった。「この国で不平等と感じたことはありますか?」という問いに、偏見を持たれたことがある、とニーナさんは言う。家を借りる時に40%の外国人が差別された、と答えているそうだ。比較的きちんとした収入がある人ですら、外国人であるというだけで断られたという。ヘイトスピーチを禁止する条例などはあるが、不動産の手続にはそれがないという。しかし、まだ欧米人であれば、この状況はマシなのだそうだ。部屋を借りる人がアフリカや中国の出身だった場合はもっと大変になるそうだ。また、東南アジア出身で日本人男性と結婚している人が「水商売をしているのではないか?」とか「日本人を騙して結婚した」などという侮蔑的な言葉を投げかけられることもあるという。

 また、外国人女性の悩みを話す会「プフー」に参加する日本人は、いわゆる欧米人と友人になりたがる人もかつては多かった。欧米の人は皆、英語が流ちょうだと思われており、ニーナさんも英語の練習台として見られることもあったようだ。そのため、パルヨンに参加した欧米人以外の外国人が寂しい思いをして、がっかりしてしまい、二度と来なくなってしまったというケースもあったという。


さまざまな課題がある

 これは外国人女性だけには限らないが、どうしても国と国の関係が、個人の人間関係にも影響してしまうこともあった。現在、日韓関係があまり良好と言えず、そのために気まずい思いをする韓国出身の人。また、今回のCOVID-19の流行により、「自分は中国から来ているため、出身国を言うことが恥ずかしい」というケースもあるそうだ。また、観光ブームで、中国人にはたくさん仕事があったが、このコロナ禍で仕事を失ってしまった人もたくさんいる。ますます孤立感を深める外国人が多くなっているようだ。

 就労ビザの問題もある。就労ビザは発行されているその職種でしか仕事ができない。母国では社会福祉の仕事やラジオのDJなどで働いていたが、日本では、ビザの要件となっている仕事しかしてはいけないことになっている。永住資格をとれば、好きな職種につけるが、就労ビザではそうはいかない。不法就労するわけではないのだから、そこの幅を広げてくれれば、もっと才能のある人が面白いことができるのではないか、とニーナさんは言う。日本人の労働力が足りないからビザが降りるということもある。外国人技能実習生の場合がそうだ。そうした実習生の中には、雇用先にパスポートを没収されることもあるという。これはあきらかに人権侵害で、このような行為を禁止するために法制化するように働きかけている団体もあるようだ。

 『パルヨン』の設立当初から現在まで、メンバーの変化などがあったかどうかを聞いてみた。京都の外国人女性の中には、年齢を重ねてきた人が多くなったとのこと。東京で集まりに来る人は若い女性が多いそうだ。その背景として、京都には定住している人が多く参加するが、東京では夫の転勤などで一時的な滞在をしている人が多く来る傾向があるとのこと。色々なライフステージがあるのだ、ということを実感している。

 ここでニーナさんは京都の課題に関しても言及した。京都の高齢化、特に夫に先立たれた高齢女性が増えているのではないか、ここに若いエネルギーを吹き込めないか、ということを考えているとのこと。高齢女性の中に若い人たちが関わっていくことができたらいいと思っている。また、『パルヨン』の支援対象は外国人女性だが、「となりの外国人」のワークショップなどで外国人男性も対象にして、もっと交流の場を持てればいいと思っている。ニーナさんは『パルヨン』としての可能性を考えている。地域コミュニティで外国人が困ったことがあれば、『パルヨン』が連絡をもらって、一緒に行くこともできる。下京で活動している人と交流の場を作ることができないか、ということも考えている。


▲外国人のためのわかりやすい生活ハンドブック

▲パルヨンが作っている冊子「となりの外国人とのおつきあい」


今後の展望は?

 今後の『パルヨン』の展望を聞いてみた。現在は、コロナ禍で孤立している外国人女性のために働きたいと思っている。「皆でリラックスしたい。少人数で紅葉を見に行ったり、マインドフルネス瞑想をやってみるのもいい」。とニーナさんは言う。就職支援、居場所を見つける、ということなどを『パルヨン』としてやっていきたいと思う、とのこと。

 読者が『パルヨン』に対してできることはないかという質問に対して、「パルヨンはボランティアを募集している」という答えが返ってきた。「やさしい日本語講座」や、外国人女性の集まりの「プフー」のサポートなど、色々なことをやっているので、興味があったら参加してほしい、と言う。

 「外国人にとって住みやすい社会が日本人も住みやすい」とニーナさんは言う。「排除する社会は住みにくい。」「子どもの時から多文化共生を教えて、偏見を持たないようにすることが大切」だと。

 そして次のような名言を残した。「内なる国際化は近所から。」




ニーナ・ハッカライネン 

フィンランド出身。日本に旅行で来たことをきっかけに日本の仏教や文化に関心を持ち、日本語を学ぶ。1990年代に再来日。以後、日本在住。大学で教えたり、フィンランドのテレビ局の仕事に従事。その間に日本にいる外国人女性の困難な状況を知り、『外国人女性の会パルヨン』を立ち上げる。


【外国人女性の会 パルヨン】

E-mail: paruyon@gmail.com

外国人女性のためのサポート電話: 080-4021-3055

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