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コロナと向き合う 下京のwithコロナ【web限定公開】

更新日:2021年3月14日

 


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、瞬く間に全世界に広がり、人びとのくらしは大きく変化しました。他者や社会のために活動してきた市民公益活動も、これまでの活動の在り方を問い直す必要に迫られています。

 そこで「Carre'」では、下京区の市民活動者がどのようにコロナと向き合ってきたかを取材することにしました。

 Withコロナという激動の社会において、互いに支え合い、心豊かに暮らしていける社会を築こうとする取組を、ぜひご覧ください。


※取材内容は、令和2年8月時点のものです。

※取材は、電話・メール・少人数での取材など、感染拡大防止に配慮して実施いたしました。




子育て世代を支援 BEBERICA


【団体概要】

 BEBERICAは、「あかちゃんと一緒にせかいをつくる」をテーマに、あかちゃんとおとなに向けたパフォーマンス(ベイビーシアター)を制作する、2016年に弓井茉那さんを中心に結成されたシアターカンパニー。2018年から京都を拠点に活動。これまでに数々の職場や公共ホールで上演を行う。コロナ以降では、はじめて10月に茨木クリエイトセンターで公演を行う。


【コロナ禍で変わったこと】

 いくつかのイベントが中止・延期となる。その中で、かねてより挑戦したかったオンラインでのベイビーシアター公演、子育て中の人たちとベイビーシアターファンの交流の場となるオンラインサロンを始める。


【子育て世代が困っていること】

 子育て当事者は平常時でも孤独に陥りがち。コロナ禍により子育て広場や子どもと参加できるイベントがなくなり、息抜きできる機会が減っており、子育て当事者は更に孤独な状況に追い込まれている。


【今後の課題】

 感染予防の観点から、本来、あかちゃんの成長と発達に欠かせない「ふれあい」「他者との交流」を避けざるを得なくなった。いずれコロナが去ったあとも、この延長で敬遠されてしまわないように、「あかちゃんとおとなが同じ観劇体験を共にすること」を通して、「あかちゃんとおとなが一緒に参加する社会づくり」の重要性について、訴えていきたい。






子どもを支援 西本願寺 みんなの笑顔食堂


【団体概要】

 西本願寺「みんなの笑顔食堂」は、2018年に西本願寺の重点プロジェクトのひとつとして始められた。月に1度、子どもたち、またはその保護者などを招いて、子ども食堂を開催。対象は保育園から中学生くらいまでの子ども。食材は企業などから提供され、西本願寺職員やボランティアにより運営されており、毎回100人くらい集まる。


【コロナで変わったこと】

 三密を避けなければいけないため、コロナの流行が始まった2月から現在(8月)まで、子ども食堂は中止している。そのため、現在は、がんこ寿司とコラボでお弁当を毎日80食を提供している。この弁当は、バイトがなくなった大学生も購入可能としている。(8月末終了)


【子どもたちが困っていること】

 皆で交流する機会が減ってしまったこと。


【今後の課題】

 子ども食堂の開催が見込めない現在、新たな居場所作りとして、密になることを避けた学習支援を考えている。夕方に学習支援を行い、参加した子どもに弁当を持って帰ってもらうことも検討。学習支援と生活支援のコラボを考える。頻度をどのくらいでやるかは未定。

 また西本願寺は北米、ハワイ、ブラジル、ネパールなど海外に支部を持つため、それらの拠点と協働して、海外の困っている子どもたちへの支援も展開していきたい。





障がい者を支援 社会福祉法人 きょうどう


【団体概要】

 様々なハンディキャップを持ちながらも、その人らしい生き方、働き方ができるように、多くの人の支えを得て、いろいろな仕事に取り組んでいる就労継続支援B型事業所。自主製品の作成から清掃業務まで30名の利用者さんが関わり、日々奮闘している。


【コロナで変わったこと】

 宿泊客の減少により、ゲストハウスの仕事はほぼなくなったが、その代わりにマスクの販売や内職を増やして、トータル的にはプラスに転じることができた。ただ、利用者さんたちが、楽しみにしているイベントの中止があり、余暇活動もできなくなり、モチベーションが低下し、不安定な精神状態になる人も増えたので、事業所内で楽しみを提供できる場を模索中。


【障がいを持つ方が困っていること】

 利用者さんはテレビの情報やネットの情報だけではコロナのことを理解するのが困難。過剰に恐れる、あるいはまったく気にしないなどに分かれる。疑わしい時の対処の方法などを外部から伝えてもらえれば、印象に残りやすく活用しやすい。新たな生活様式に正しく対応していく指針がほしい。


【今後の課題】

 利用者さんの感染拡大防止のための正しい知識の提供や安全確保が最大のテーマ。またコロナが問題となっている現状に対して、事業所が地域のためにできることを模索。下京区内の保育園へのマスクの寄付なども行ったが、今後もこういった地域の連携の一端を担いたい。






在留外国人を支援 パルヨン


【団体概要】

 パルヨンは、2007年、在日フィンランド女性ニーナ・ハッカライネンさんによって設立された、仕事・留学・結婚などで日本に在住している外国人女性を支援する団体。主な活動は、隔月に外国人女性と日本人女性が集まり、情報交換、悩み相談などを行う“プフー”というミーティング、外国人女性のためのサポート電話、日本人と外国人がうまく共存していくためのワークショップ開催など。


【コロナで変わったこと】

  “プフー”をよりどころとしている外国人女性も多かったため、5月は初めてオンラインで“プフー”を開催した。


【在留外国人の方が困っていること】

 サポート電話の悩みもコロナ関連のものが多々ある。中でも、給付金の情報などは、どうしても外国人には届きにくい。パルヨンでは、Facebookなどで、やさしい日本語を使った情報などを発信している。


【今後の課題】

 この状況の中で、外国人女性が孤立しないように、また情報がきちんといきわたるような支援が求められる。オンラインが苦手な外国人女性もいるので、三密を避けて、少数で集まりを持つ、などの対応を考えたい。






学生を支援 



【団体概要】

 学⽣PLACE+(がくせいぷらす)は、キャンパスプラザ京都の⼀階にある、市内で京都のまちの活性化や社会貢献につながる活動を⾏う学⽣をサポートするスペース。学⽣団体の会議や作業などに使うスペースの提供、備品の貸出、専⾨コーディネーターによる活動の相談などを⾏っている。また、学⽣PLACE+を拠点にした、地域連携やボランティアコーディネーションの事業も⾏っている。


【コロナで変わったこと】

 4⽉中旬から5⽉末までは、学⽣PLACE+の利⽤を停⽌し、対⾯で実施している事業についても休⽌。また、前期期間中は、各⼤学も課外活動を⾃粛されており、学⽣もこれまでのような活動が⼗分にできない状況である。


【学⽣が困っていること】

 オンライン活動を⾏うにも、コミュニケーションには限界があり、メンバーのモチベーション維持や作業分担、引継ぎなど、全体の運営に⽀障が出ている。

 イベントや企画は中⽌せざるを得ず、何とか実施できないか⽅法を模索している。

 新⼊⽣は友⼈作りもままならない状況であり、学⽣団体は新⼊⽣の加⼊が難しく、活動の維持に課題を抱えている。


【今後の課題】

 事業の内容を⼯夫し、withコロナに対応した⽀援を⾏っていくこと。






高齢者を支援 京都市下京・東部地域包括支援センター


【団体概要】

 地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、介護・福祉・健康・医療などさまざまな面から総合的に支えるための活動を行っている。


【コロナで変わったこと】

 利用者のお宅に伺う際は、必ずマスクを着用してアルコール消毒を行うようになった。相談業務は電話対応が多くなったため、対面での対応に比べて様子がわかりづらい。

 また、地域行事や高齢者向けのイベントの明確な判断基準がなく、感染者が出た場合、誹謗中傷にあったりするのではないかという不安から、実施を自粛する地域が増えている。


【高齢者の方が困っていること】

 買い物も最低限にするなど、外出の機会が少なくなり、筋力の低下や食事の偏りなどが見られる。また、病院へ行きたいと思っても、感染が怖く取りやめる人もいる。

 家族や友人に会うことも自粛しているため、誰とも会話をしない日が増え、メンタルの不調を訴える人も増えている。「家族旅行」「孫の結婚式」といった外出を楽しみにしておられた方も、取りやめざるをえない状況でつらい思いをされている。


【今後求められること】

 これまで高齢者の孤立を予防するための居場所づくり、声を掛け合いながら顔の見える関係づくりに取り組んできた。コロナの収束の目途がたたない中、どう利用者の生活を支えていくか、どう地域の課題と向き合っていくか、正解はないができることから向き合っていきたい。





宿泊業の現状 和泉屋旅館


【団体概要】

 創業明治22年。平成2年に法人化。平成8年地上5階地下1階の近代的な施設へと改築。国宝西本願寺を望むロケーションに「時代は変われどおもてなしの心はそのままに」をモットーとし、お客様を迎える宿。


【コロナで変わったこと】

 3月中旬から修学旅行等の団体旅行のキャンセルが相次ぎ、4~6月は休業せざるを得ない状態であった。7月から営業を再開しているものの、利用客は1週間に10人に満たない状態が続いている。


【和泉屋旅館(宿泊業)が困っていること】

 利用減に伴う減収や、人件費、コロナ対策にかかる設備費など、経営が難しい状態が続いており、廃業を決める宿泊施設もある。また、老舗の旅館においては、高齢のスタッフが多く、スタッフへの感染防止対策も必要である。

 和泉屋旅館では公的機関の助成制度を利用して、他の旅館と連携したコロナ感染による帰宅困難者の受入制度の導入や旅館紹介ビデオレターの作成などに取り組んでいる。また、スタッフとの話し合いを重ね、体温を計測するサーモセンサーや、各部屋への空気清浄機・網戸の設置など、利用客・スタッフが安全・快適に過ごせる感染防止対策を講じている。


【今後の課題】

 旅館の強みは“おもてなし”。観光スポットや料理など旅行にまつわる利用客の要望・相談に、全スタッフが対面のコミュニケーションで応じてきた。しかし、それが制約されている今、旅館として何ができるのかを問い直す必要がある。





アーティストの現状 カモガワ・フィールドワーク・ラボラトリー


【プロジェクト概要】

 カモガワ・フィールドワーク・ラボラトリーは2019年、京都でロシア人アーティスト、エレナ・トゥタッチコワさんによって、立ち上げられたプロジェクト。歩きながら体験するフィールドワークという手法を通して、人間がどう世界を認識し想像するかについて考える機会を作り、参加者に自分が見慣れた風景での新たな発見をしてもらい、普遍的な世界を知ってもらうことを目的とする。また、共同で作品を作り上げる、ということも行っている。なお、このプロジェクトにはアーティストだけではなく、一般の人も参加できる。


【コロナで変わったこと】

 イベントの中止、延期などによって、アーティストたちの収入が激減し、一緒に何かを制作するといったことが難しくなった。また、プロジェクトは何人かで行うもので、実際に会わなければできない。しかし、世の中の流れが急速なオンライン化に進んでしまっていることに違和感を覚えている。

 緊急事態宣言があけた後の今年の8月に、京都市の助成を受けて、フィールドワークのプロジェクトを少人数に限定して再開。参加者にも好評だった。


【アーティストとして期待すること】

 コロナ禍ではあるが、行きたいところに自由に行けるようになるといい。また、外国人アーティストとしては、地域の人たちと話し合う機会がもっと増えればいいと思う。話し合いの場を提供してほしい。


【今後の課題】

 今後も少人数で行うフィールドワークの機会を提供していくとともに、誰かと一緒に作った作品(CD,書籍など)を提供して、社会に発信し続けたい。






~取材を終えて~

 コロナウィルスという未曽有の危機に直面して、色々なことに制限をもうけられ、不便な生活を強いられることとなりました。皆さんはこの状況にどう向き合っているのか知りたいと思った私たちは、8つの団体の現状や取組について取材をしました。どの団体でも、コロナに振り回されるのではなく、危険性を認識したうえで、課題にしっかり向き合い、解決策を練っているように思いました。

 今回、最前線で向き合っている医療従事者の方へのインタビューはかないませんでした。電話でお話だけさせていただいたところ、「まだ、未知の段階で、これからどう変わっていくかもわからない」ということでした。

 刻々と変わる状況の中、私たちは生きています。支援対象の人に手を差し伸べなければ、という強い思いの中でそれぞれの団体の皆さんが活動されていました。「自分を守り、他者を守ろう」ひとりひとりがこういう思いを持つことで、このコロナ禍を乗り越えることができる。取材をしていて、そういう気持ちになりました。

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