互いに学び合う関係性 ~一方的な支援ではなく~   認定NPO法人 テラ・ルネッサンス 【Carré04掲載】

最終更新: 3月14日


インタビュー|栗田佳典さん


不平等とは

 「現地の人をかわいそうだと思ったことはないです。それぞれの国でそれぞれの豊かさを見てきました。心の面で見ると、むしろこれらの国の方が豊かではないか?と思うこともあります。」

 お話を伺った認定NPO法人『テラ・ルネッサンス』の啓発事業部・栗田佳典さんの言葉にはっとした。今回、この情報誌で取り上げているのは、SDGsの目標 10「人や国の不平等をなくそう」だ。インタビューの中で栗田さんがそうおっしゃった時に、取材するこちら側に「支援する側は一方的に助ける側」という思い込みがあったかもしれない。今回は、「人や国の不平等をなくそう」というテーマをベースに『テラ・ルネッサンス』を取材した。


テラ・ルネッサンスとは

 『テラ・ルネッサンス』は京都市下京区にオフィスを構える認定NPO法人で、2001年に現在の理事・事務局長である鬼丸昌也さんが設立した。鬼丸さんがカンボジアのスタディーツアーに参加した際に「自分は何ができるのか?」と思ったことをきっかけに、そこから支えようとする仲間が集まってできた団体だ。カンボジアには現在も地雷が埋まっている。活動を続ける中で、内戦時には子ども兵が存在していたことも知った。その後、活動拠点をアフリカにも広げていった。最初に関わった国はウガンダ、その後、ブルンジやコンゴにも活動拠点を広げていく。このアフリカ三国とアジアではカンボジアとラオス。そして日本でも震災の復興支援に取り組んでいる。当初、1名からスタートした『テラ・ルネッサンス』も現在では、現地ス タッフ、学生や社会人のインターンも含め97人がスタッフとして働いている。今回、インタビューをした栗田さんは2007年から京都の事務所で仕事をしている。


▲赤のどくろの標識は地雷原という印。後ろには民家


▲イギリスのNGO、MAGによる地雷撤去


数字だけでは測れない

 栗田さんは、世界中で広がる格差について、世界の10%の富裕層が世界の所得の40%を占めているということがよく引き合いに出されるが、これはあくまで収入面の話だという。また、世界銀行が1日1.9ドル(日本円にして約200円)で生活できるかどうかを貧困の指標として示している。しかし、これらの数字だけでかわいそうとは決めつけられない。数字では測れないものがあることをみていかなければいけないという。SDGsのゴールはどうしても指標でしか測れないが、その先にあるひとつひとつの課題を見ていくことの大切さを栗田さんは指摘する。

 支援対象国には、子ども兵の存在という好ましくない現実がある。支援対象国のひとつコンゴでは、今も紛争が起こっている。武装勢力による性暴力の被害者も多く、助かるはずの病気ですら治療できずに亡くなっていく現実がある。この現実にどう寄り添って、課題解決をしていくのかを『テラ・ルネッサンス』は考える。ひとつの課題が出てくると別の課題が出てくる。

 それぞれの国によって課題は様々である。しかし共通していることは、歴史を踏まえて対応するということだ。アフリカの場合は欧米諸国の植民地であったこと、カンボジアでは隣国のベトナム戦争があったことによって現在の課題が生まれている。カンボジアでは地雷の被害がまだまだあるが、今、生活している人たちの大半は戦争が終わってから生まれた人たちである。しかし、課題が残った状態で生活するしかない「不平等さ」がある。カンボジアの場合は、内戦のさなかにタイに逃げたが、その後戻ってきた人たちが、カンボジアでの生活を再開しようと思っても、自分がかつて所有した土地は誰かのものになってしまっている。そのため地雷の埋まっている土地に拠点を移さざるを得ないという現状があった。そこで、課題解決として、『テラ・ルネッサンス』が地雷の撤去の支援や畜産の指導などを行っている。

 決して支援対象国の人たちが怠惰であるとか、暴力的であるとかいう理由で現在の問題があるわけではない。また支援対象国の人たちに課題を乗り越えられる力がないわけではない。ひとりひとりに力があるのだ。その力を信じて手伝うというのが『テラ・ルネッサンス』の支援のあり方だという。いいことだ!と思って勝手にこちら側でレールを敷くのではない。あくまでもレールは自分たちで敷いてもらい、そのことに寄り添う。そのために現地スタッフを大切にするスタンスをとっている。たとえば、ウガンダでは社会復帰の手伝いをしているが、現地の運営は日本人には依存させないようにしている。『テラ・ルネッサンス』は海外のNGO、国連機関や現地自治体とのパートナーシップも大切にしている。パートナーシップを組むことで乗り越えられることも数多くあるということだ。


今後の日本の役割は?

 そんな中で、栗田さんに「日本が国際的にしなければいけない役割」について尋ねた。資料を頂きながら説明を受けると、SDGsの中で、皮肉なことに今回インタビューをするきっかけとなった目標10について日本の達成度が下がっている。ユニセフが出している統計で見てみると、日本は子どものいる世帯においての格差が広がっている。所得が低ければ、学校での生活に影響もするし、習い事もままならない。また、高齢者の貧困率も悪化している、とのこと。日本にとって必要なことは、まず内なるものに目をむけて、この現実を直視することではないか、と言う。SDGsの目標は「誰ひとり取り残さない」ということだ。その観点からもこれらのことは重要な側面があると考えられる。ジェンダーの平等も危ういのではないか、と栗田さんは指摘する。日本では女性の政治参加がまだ少ないが、アフリカでは女性の政治参加が多い。このことはアフリカから学べるのではないか、と栗田さんは指摘する。

 今回のコロナで、海外の活動には影響はなかったのだろうか。それぞれの地域で規制があり、十分な活動ができず収入が減少した。ウガンダではすごいスピードでウィルスが広がっている。コロナ禍の中でどう動くのかが課題だ。『テラ・ルネッサンス』の強みは現地スタッフがいることだ。元子ども兵がマスクを作っているそうだ。コロナによって世界が逆戻りして、貧困がひどくならないためにはどうしたらいいか、ということも課題だろう。

 東日本大震災の復興支援として現在、大槌復興刺し子プロジェクトが行われている。東日本大震災が発生した時に、アフリカの人たちが「日本の人が困っているから、何かを手伝いたい」と届けてくれた支援に背中を押され、物資の提供や炊き出しのコーディネートなどから活動は始まった。その後、岩手県大槌町に支援に入っていたボランティアグループから大槌復興刺し子プロジェクトの事業を受け継いだ。昔から日本に伝わる手仕事のひとつである「刺し子」の企画・製作・販売を通した雇用創出、作り手の人たちの居場所作りの活動につながった。「思いのバトンが繋がっている」と栗田さんは言う。「すべての生命が安心して暮らせる社会を作る」ことを目標に色々なチャレンジをしていくという。


▲大槌復興刺し子プロジェクトの事業見学をいただいた方から

贈られたTシャツや刺し子が施されたTシャツ

▲ウガンダで作られた布製マスク


私たちができること

 私たちが『テラ・ルネッサンス』にできることはなんだろう。現在『テラ・ルネッサンス』では、「めぐるプロジェクト」というものを行っている。物資を現地に送るのではなく、古本や書き損じはがきなど、家庭に眠っているものを換金して支援にあてる仕組みだ。京都市内の中学校でも協力してくれているところがある。古本はわざわざ持ってこなくても、まとまった冊数があれば、業者が取りに来てくれるそうだ。また、最近、京都SDGsラボを立ち上げた。連携をもっと強固にしていくべく、様々な団体とパートナーシップを生み出していきたいそうだ。

 国際的な問題に取り組んでみたいと思っている人に何かアドバイスはないか、ということも聞いてみた。答えは「積極的にチャレンジしてほしい。そのために大切なことは経験で、今、海外に出られないが、ライブ中継がオンラインなどであるから、身の回りで情報を集めることに努力してみてほしい」とのことだった。

 最後に『テラ・ルネッサンス』の日本での活動の三本柱を書き残しておきたい。「支援・啓発・政策提言(アドボカシー)」ということだ。「支援で人が変わり、啓発で心が変わり、政策提言で社会のしくみが変わる」。この三本柱がしっかりしているからこそ、『テラ・ルネッサンス』の活動が確固としてものになっているのだ、ということを実感した。




栗田佳典(くりた・よしのり) 

静岡県生まれ。中学2年生の時に心臓手術を受け、命の大切さを教えられる。今度は誰かを救う側にまわりたいと思い、立命館大学で国際福祉を学ぶ。子ども兵に関心を持ったのが『テラ・ルネッサンス』との出会いだった。インターンを経て、大学卒業と同時に職員となる。


【認定NPO法人 テラ・ルネッサンス 京都事務局】

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