[オープンイノベーションカフェ]という言葉を聞いたことがありますか?
それは起業・創業を目指す方や新たなチャレンジをしたい方など、様々な人が集い交流することで、新たなビジネスなどを創出する場のことです。
世代を超えて繋がる場所
四条烏丸の交差点から徒歩1分、地下鉄や阪急の駅から直結している京都経済センターの3階に一般社団法人 京都知恵産業創造の森が運営する「オープンイノベーションカフェ通称KOIN(Kyoto Open Innovation Network)」がある。KOINは新しい一歩を踏み出す人のための共創の場で、フィールドや時代を超えてここに集まった〝京都の知恵と技術〟が、あなたの新しい一歩を応援してくれる。室町通りに面した広い窓からは光がたくさん入り、利用者が楽しそうにミーティングをしている様子も見られた。
創刊号の発行にあたって、下京いきいき市民活動センターのスタッフはKOINにお邪魔うぃた。私たちの取材をうけてくださったのは、企画総務部次長の湯川卓宏さんと主任の生田優里佳さんのお二人。湯川さんは京都府から、生田さんは京都市からそれぞれ出向されている。
交流と人材育成がメイン
湯川さんから、まず「京都知恵産業創造の森」の事業における6つの柱について説明があった。①交流と協同による新たな価値創造の推進、②産業人材の育成支援、③産学公連携の推進、④スマート社会等の実現、⑤産業施策の戦略的な推進、⑥京都経済センター内の支援機関との連携による産業振興、をしているとのこと。
強調されていたのは、前述の①と②に力を入れていきたいとのこと。KOINはまさにそれを象徴する場である。
KOINがスタートしたのは2019年3月中旬。利用者は増えており、登録者の数は2019年8月末の時点で約1100名。10代から60代超までの幅広い方が利用されており、そのうち学生が約1割程度登録。ここに集う人たちの多くは、将来起業や新たなチャレンジをしてみたいという夢や目標を持たれている方々だそうだ。
京都市内には場を共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルを指すコワーキングスペースといわれる場所が数多く存在する。「KOINもそのひとつ?」という質問に対して、「いえ、そうではない」と湯川さん。「ここではミーティングなどの交流が主な目的」むしろ、京都市内にたくさんあるコワーキングスペースのハブとなるよう情報発信の活動に取組んでいる。
ゆかわ たかひろ 企画総務部次長 大阪府出身
京都府ではこれまで伝統産業などに関わる。息子さんが野球部なので、試合を見に行くことが楽しみ。
スタッフが大事にすること
KOINには現在、5名の担当者がいて、湯川さんや生田さんはスタッフのひとりとして、利用者の相談に応じている。相談に来られる方の多くが、起業を考えているそうだが、事業計画やビジネスモデルなどを考える前の段階の「起業を考えているけれど、何をしたらいいのだろう」という漠然とした方にぜひ、利用してもらいたいと語った。KOINは「まず夢をふくらませる」ことを一緒にやっていきましょう、という姿勢を打ち出している。そのためにスタッフの方たちは「否定をしない」ことを大切にしているそうだ。
心がけていることは?
「起業したいのだけれど、どうしよう、という相談が最初に来た時は戸惑った」、と生田さん。御自身、起業経験はないが、そんな時にみせる生田さんの強みは、笑顔で明るく、人と人をつなぐ仲介者としての役割だ。「スタッフそれぞれに強みがある」とのこと。資金について相談したければ、金融機関から来ているスタッフに声をかけるそうだ。そんな生田さんの信条は、①共感、②相手の気持ちを尊重、③本音で対話、ということ。合わせて「KOINに来てくれた人が話しやすい場所をつくっていきたい」と話す。実際に話をして、「その人が起業しようとする中で具現化できていないところがわかってくる」と湯川さん。かっちりとした枠組みではなく、ぼんやりとした中から計画に近いものにしていく作業は、まさに夢を形にしていくことだ。
「KOIN」のOはOpen。その名前にぴったりの開かれた空間だ。ここで打ち合わせができたり、事業の相談にのってもらえたりする。もしかすると新たな出会いがあるかもしれない!
自分の仕事を楽しそうにしているお二人だが、立ち上げ当初、そして半年近くたった今も試行錯誤していることがあるそう。それは制度も何もなかったところから、整えていかなければならないことだ。そんな毎日でお忙しくされている中でも、面白そうなイベントなどを企画して主催している。35歳以下対象の起業セミナーは順調なスタートを切った。また、「友だちと起業すると友だちをなくすか?」というトークイベントには、ひとりで起業した人、友だちと起業した人の対談があり、「正解はない」というスタンスで場を盛り上げていった。「〝べき〟論はここにはありません」と生田さん。何にもとらわれないところがKOINに人が集う理由なのかもしれない。
いくた ゆりか 企画総務部主任 京都市出身
京都市ではこれまで住宅関係などを担当。趣味は国内、海外旅行。秘湯や大自然を感じることが好き。
KOINからのメッセージ
最後に読者にメッセージはありませんか?と聞いたところ、「何かビジネスをやりたいと思うことがあれば、とにかくKOINに来てみてほしい。就職ももちろんひとつの選択だけれど、それ以外にも方法があることを提示してみたい」と生田さん。
そして、湯川さんは「働き方の中で、起業というのはひとつの手段だけれども、働き方改革で副業などにも注目されている。そんな相談も大歓迎」だそうだ。少しでも仕事の仕方を考えることがあれば、ぜひ、KOINに足を運んでみてはどうだろうか?
【一般社団法人 京都知恵産業創造の森 オープンイノベーションカフェ KOIN】
〈住所〉京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町78京都経済センター3階
〈開館時間〉7:30~21:00(年中無休)
〈ホームページ〉https://open.kyoto/
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